gleam with you

フィクションかもしれないし、ノンフィクションかもしれない

私ちゃんと躁ちゃんと鬱ちゃんのお散歩

私ってなんなんだろうね。

私ちゃんはポツリとつぶやきました。最近また私ちゃんのそばに現れた、躁ちゃんと鬱ちゃんはダンマリを決め込んでいます。

私ちゃんは私ちゃんだよ。わかんねーの?

沈黙が嫌だったのか、躁ちゃんはぶっきらぼうに口を開きます。

わかんねーから聞いてんだよな。

私ちゃんもそれに応じます。

私って、この目を鼻を口を輪郭を髪質を手足を、してるから、私なのかなぁ。あのアイドルが好きだから、この料理の味が好きだから、その言葉が嫌いだから、私なのかなぁ。もし私がそうでなくなったら?薬の力で思考の方向転換によって、こんなめんどくさいことを考えなくなっても私なのかなぁ?私ってなんなのかなぁ。前に進むことも怖いし、立ち止まることも怖いし、どうしたらいいんだろう。

そんなクッソどーでもいいことで悩んでる私ちゃんを、鬱ちゃんはその手を引っ張って言いました。

ちょっと、お散歩に出かけようか。

そのドアは突然三人の前に現れました。ドアノブを回して前にやると、どうやらそこは過去の私ちゃんたるものの映像が、草原や花畑や沼に落ちていました。

私ちゃんは、鬱ちゃんと躁ちゃんに手を引っ張られながら、足を一歩一歩と動かします。

それは病室で点滴を打たれながら笑っている3〜4歳の私ちゃんでした。「私全然覚えてないよ」「でも笑ってんじゃん」「笑ってるね」「記憶はないけど、確かこれは親戚からポケモンの万歩計みたいななのもらったんだよなぁ」「みんなうれしそうだね」「この頃生きるか死ぬかわからない時期だったらしいよ」「みんな私ちゃんが生きることを望んでたんだね」「今、死にたがりなのにね」「ウケる」「クッソ罰当たりじゃん」

それはいじめられて悲しんでる中学生の私ちゃんでした。「まぁこの原因は私のクソひん曲がった価値観もあるからね、どっちが悪いとかないよね」「あっ、スーパーの屋上にも呼び出されてんじゃん」「プライベートでもいじめとかキッツ」「その時、こんな可愛い服(お前のクソみたいな顔面には)似合わないからやめな、って言われて、家に帰ってお母さんごめんねごめんね、って言いながら脱いだなぁ」「お母さん可愛い服選んだのに不憫すぎだろ」「カワイソス」「まぁこの経験があったから、無意識に人を傷つける以外で、人を傷つけないように行動しなきゃなって学べたからいいけどね」「ポジティブすぎんだろ」「まぁ当たり前のことだけどね」

それは自己嫌悪がさらに激しくなってきた大学生の私ちゃんでした。「鏡を覗くとブスがうつって、ショーウィンドウにも車の窓にもスプーンにも、恐怖を覚えていた時期です」「病気かよ!」「あと包丁向けられて死のうと言われた時から包丁恐怖症なのに調理の授業受けててわらう」「トラウマを克服しようと思ったら無理だった」「ウケる」「この頃から人生諦めてたね、どーでもいいやって」「それでついに卒業する間近に爆発して、死ぬことを決意したんだよね」「はてブロも推しも死ぬために生きていくための支えだったなぁ」「ふーん」

そのあとも三人でいろんな私ちゃんをみては、笑ったり、悲しんだら、哀れんだり、しました。

どうだった?

どうだったと言われましても…。

と私ちゃんは鬱ちゃんに告げます。

答えはわかってるでしょう。私ちゃんは、運命論者で破滅願望持ちのくせに破壊願望もあって自分が嫌いだしそんな自分を好きなのは自分だけだって自己愛者だし犬が好きだしお母さんと馬は合わないけどやっぱどこかメンタルが似てるし絵を描くのが好きでポエムを書くのが好きだし料理は下手くそだしブスだしストイックかと思ったら堕落してるし。人はね、変わるよ。変わらないものなんて、きっとないよ。私ちゃんもいろんな経験を積み重ねていって、いろんなことを感じて思って、失敗して、学んで、死にたくなるような絶望を感じて、生きたいと思える希望を感じて、一瞬一瞬気持ちが変化していくんだよ。わたしたちの存在もそうだよ。私ちゃんの思ってる感じてることがわたしたちだよ。私ちゃんは薬を飲んでわたしたちをいなくさせようとしてるけど、寂しいけど、たぶんそれがいいんだよ。いいなんて誰にも分からないからいいんだよ。

それもそうだね。

私ちゃんは一人きりの部屋でつぶやき、そして薬を飲んで、眠りにつくのです。